わがままモデル王子は危険な香り
気持ち悪い……

こんなときに気持ち悪くなったって、吐くものなんてないのに

「…う、うぇっ」

胃液だけがあがってきた
食道が熱くて痛い

「おぇ」

吐きたいのに、吐くものがない
カラカラの喉が痛いと悲鳴をあげる

「おい…!」

王子が戻ってきた

桜稀さんは王子の腕の中にはいなかった

床に吐いている私の肩を抱きしめると王子は私の頭を撫でた

「大丈夫か?
多田野に何かされたか?」

王子の胸に私の顔が押し付けられる

私は首を横に振った

「ち、ちがっ」

王子のぬくもり
王子の匂いが私を包む

それが苦しかった
それが辛かった


優しくしないで
私は……


あなたのお姉さんの夫と寝ようとした女だよ


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