天使的恋愛論
one
不思議くん
私のクラスの天祢くんは、すごく綺麗な人。
去年の夏に転校してきた、少し不思議な人だ。
「咲、聞いてる?」
「あ、ううん」
呆れた顔で溜息をつく、親友の里菜ちゃんの延長線上で、私は天祢くんを見ていた。
「今日、咲日誌当番でしょっ?」
「えっ!そうだっけ!?」
里菜ちゃんの言葉に、私はハッと我に返る。
視線を落とせば、机の上に日誌が置かれていた。
「さっき、加瀬くんが置いてったけど。咲完全に無視してたし。」
「うーあー!嘘でしょ!?加瀬くんごめーん!」
「もう帰ったっつーの。」
うう、とうなだれながら、私は日誌を開いた。
作間咲、名前だけは綺麗な、高校2年生だ。
「加瀬くん、怒ったかなあ…?」
「さあね。でも可哀相だよねえ、せっかく届けてくれたのに、咲知らんぷりだし。」
私に日誌を届けてくれたらしい加瀬くん、というのは、クラスの人気者の男の子。
誰にでも優しくて、里菜ちゃんいわく、紳士オーラ丸だし、らしい。
「てことで、咲。あたしは先に部活行くからね?」
「う、うんっ!私も終わったら行くね!」
そう言った私に頷き、里菜ちゃんは教室から出て行った。