合鍵 ~あたしの不愉快な夏休み~
この人が、大学受験のための勉強以前に、自分のありかたを見極めたいっていう考えだってことはわかった。

もっといろんなことが知りたいってことも。


そこまでちゃんと考えてるなら、高校側ときちんと話すればいいのに。


――いや、多分何度もやりあってるんだろうな。


高校は狭い世界だから。

大学に受からせる以外の価値観を持ち出されると混乱するだけだよね。




「……あんたの時間を使わせたのは悪かったな」


ソファから立ち上がりながら。

塔也はぼそっと言った。


(そんなこと、気遣ってくれるんだ)


意外に思いながら、塔也の顔を見上げると。


塔也はもうすでにあたしに背を向けていて、どんな顔してたのかわからなかった。

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