闇夜の数だけエゴはある
野須平の頭を掴んだまま、俺は奴の体を片手で持ち上げる。

俺と野須平の体格はほぼ同じ。

平均的な成人男子の体格だ。

それを片手で持ち上げるというのは、常軌を逸した腕力と言わざるを得ない。

無論人間に例えれば、だが。

俺は野須平を近くの木の幹に叩きつける!

「あぐっ!」

顔面から幹に押し付けられ、うめく野須平。

しかし俺の腕に食い込ませた爪は放さない。

むしろより一層深く食い込んでいるように思えた。

「放せ…!放せ貴様!殺してやるぞ…梓を…僕の獲物を!」

「何言ってやがる」

そう言って。

俺は野須平の顔面をもう一度幹に叩きつける!

グヂャッ!

柔らかい鼻骨の潰れる音。

木の幹にベットリと血が塗りつけられた。

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