闇夜の数だけエゴはある
「いつまで覗き見(ピーピング)してるつもり?」

穏やかな声音で梓が言う。

闇の中に呼びかけつつも、足蹴にしたままの私への牽制も怠らない。

私が少しでもおかしな動きをすれば、踏みつけたままの頭部を砕く。

彼女の足先からそんな気配が伝わってきていた。

「出てこないなら敵性人物と見なして問答無用で殺していい?私の蹴りはこの位置からでも届くわよ?」

今度の声は殺気がこもっていた。

聞くだけで全身が粟立つような戦慄の声。

闘争に身を置いた事のない人間ならば、途端に震えが止まらなくなり、まともに声を出す事もできなくなるだろう。

そんな梓の声を聞いて。

「……」

闇の中に潜んでいた人物は、ゆっくりと姿を現した。

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