闇夜の数だけエゴはある
じりじりと距離を詰めていく俺に対し。

「吠え面かかないでよっ?」

その女…杖縁梓の右脚が消失した。

膝から、なんて中途半端な事はしない。

脚の付け根から、完全に消失する。

膝下が消えてもあの速度、あの間合いだったのだ。

脚の付け根から消失するという事は、更に間合いが伸びるという事。

更に変則的な蹴りが飛んでくるという事。

更に威力の高い蹴りになるという事。

事実、俺に命中する蹴り…『無影の蹴撃』は、俺の動体視力では見切れないほどの速度で打ち込まれ、全身に内出血、重度の打撲、骨折を刻み込んでいった。

重い打撃。

成程、名門亜吸血種と言われるだけはある。

全身を苛む激痛。

俺はその激痛に…。

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