CURODO

魔法の呪文

「おぉっ。」
 数秒の間に連中がどんどん遠ざかっていく。しょうがないよな、走っても軽トラに追いつく訳がない。本屋の角を曲がって大通りに出ると、夜中なのに車が結構走っていた。
「大丈夫かぁ?」
 太一が窓から顔を出して声をかけてきた。
「あぁ、大丈夫だ。奇跡的に撃たれてないし。」
「・・・大丈夫。」
 真矢の声がやたらと元気がなかった。まさか、どこか撃たれたのか・・・!?
「おい、本当に大丈夫かよ。」
 心配になって近づくと、真矢が足を押えていた。手をどかすと、足首がなんとも痛々しい青あざが出来ていた。
「これくらい平気よ。」
 どう見ても痛そうなのに、それでも強がる真矢の目には少し涙が浮かんでいた。俺はどうすればいいのか分からないので、とりあえず昔幼稚園の先生に教えてもらった魔法の呪文を言ってみた。
「い、痛いの痛いのとんでいけー☆」
「まあ凄いっ。みるみるうちに痛みが引いていくわ☆・・・これでいい?」
「お前なぁ。」
「その歳でそれやる方が痛いわよ。」
「なんだよ、せっかく怪我を治してやろうとだな」
「でも」
 真矢が俺の言葉を遮ってこちらを向いた。
「ありがとう。」
 にこっと笑ったその顔にはやっぱりまだ子供っぽい無邪気さがあった。可愛いとこあるじゃねぇか。さっきの演技はイラッときたがな。
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