マジックストーン

 一足二足忍び足……でそおっとその場から逃げたい。逃げたいけどがっちり神崎先輩に抱きしめられてるぅーっ。

「優衣ちゃんにとっても似合うメイド服作らせるからね」

 そっと耳に注ぎ込まれた声は優しさと甘さをぎゅっとしたもの。

「べっ、別にそんなのいらないですからあっ!」

 バタバタともがいても話してくれない神崎先輩は「そんなに動くならチューしちゃうよ?」と――っ?!

 み、耳ーっ!!!!!!

「な! なな舐めっ――」

「かわいーなあ」

 神崎先輩どうしてそんなっ……言ってもムダだよね。

 しゅんと小さくなるべく影を薄くするあたしは静かに俯いていた。

 一限目の始まりのチャイムが鳴り数分後、担任の先生が教室に入ってきて「文化祭なにやるかー」とどかっと椅子に座る。

「メイドがいいと思いまーすっ」

 と勢い良く手を挙げて発言したのはもちろん私を膝に乗せてる神崎先輩。

 先生も早く神崎先輩を追っ払ってくださいってばーっ。

「おお、神崎」

 おお、じゃないですよ!なに、親しみを込めちゃってるんですかっ!!

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