マジックストーン

スキorスキ?



 ◇◇◇


 スカートを翻しながら、日頃の運動不足解消を兼ねて、階段を駆け上る。

 一番上まで駆け上り、そこで一度膝に手をついて、息を整える。

「んっ」

 小さく力を入れて、鉄の固まりを全身で押し開けた。

 びゅうっと。開けた途端に、秋の風に包まれた。乾いた気持ちのいい秋の風。

「……何か用か?」

 ぶっきらぼうな声が、右側から聞こえてきた。そんなぶっきらぼうな屋上大好き岩佐先輩は珍しくタバコを吸っていない。

「ちょっと、神崎先輩に用があって。岩佐先輩なら、どこにいるか分かると思ったんですけど……分かりますか?」

「……はあー」

 質問がため息で返ってきた。そんな岩佐先輩を見て、首をかしげれば「いるよ。そこに」と親指を立てて、後ろの壁を指す。

 ……壁、が、どうかしたのかな?

 あ。そっか。 これから階段上って屋上に来るってことか。

「じゃあ、私も待ちますね」

 神崎先輩いつ来ますかね、としゃべりながら、岩佐先輩の隣に腰を下ろした。

「は? おま……まあ、いいか」

 どうでもいいか、といった感じに、岩佐先輩は私に何か言おうとして諦めた。私が気になって、なんですか?と聞いたら、忘れた、ときっぱり。

 20歳未満でタバコを吸うと忘れやすくなるのかな?

< 221 / 275 >

この作品をシェア

pagetop