マジックストーン


 私が教室から出た後、教室から『ウソだーっ』だなんて、笑い飛ばす声が聞こえる。

 信じてもらってないっ?!

「……ゆーい」

「えっ?あ、梨海ちゃん……」

「ずいぶんと大変そうね」

「見てたなら助けてよぉ」

「ごめん、ごめん」

 にこにこする梨海ちゃんに、一通り出来事を話せば、楽しげに微笑み「良かったじゃん」と、一言。

「何も良くないっ!」

「だって、よく考えなさいよ。神崎先輩は、頭良し、顔良し、運動神経良しの三拍子揃った男っ!結構良いと思わないわけ?」

「……思わないっ。神崎先輩、女たらしなんでしょ?私じゃなくても相手ならいくらでもいるんじゃ……」

「そこなのよ。神崎先輩ってセフレは結構いるみたいなんだけど、昨日みたいに廊下とかで抱きしめたりしないらしいの。
本当に、体の関係しか持たないんだって」

 ……どういうことだろ。

 体の関係だけって、何?

「梨海ちゃん……その」

「セフレは、セックスフレンドの略。つまり、付き合ってないんだけどエッチはする、みたいな。分かる?」

「……うん」

 だったら。
 その“セフレ”っていう人の中からひとり選べば良いのに。

 選び放題なんじゃないのかな?


< 24 / 275 >

この作品をシェア

pagetop