マジックストーン

「『学校に反発するなら、バカにされないように勉強だけはしなさいよっ!!』って、1年の夏休みに怒鳴られた。 それから、テストが近くなると俺にノートのコピーを叩きつけるんだよ」

「悔しかったんじゃないの?幼なじみが、身なりだけで見下されて言われるのが」

 千紗らしいって言えば千紗らしいけどね。

 再び、欠伸を噛み締める啓輔が「それにさ」と、目じりを擦りながら口を開いた。

「保健室行って寝ようとしても、長谷川って奴が生物の問題出してくるんだよ。寝たくても寝れねぇ」

 長谷川 樹(はせがわたつき)先生は、生物の先生だから、そりゃあ生物の問題出すでしょ。

 啓輔に問題出すってことは、千紗に言われてるんだろうな。

 ああ、ほら。
 タツキさんって千紗と付き合ってるからさ、色々あるんじゃない?

 でも、このこと啓輔は知らないんだよねー。

「あっ。そろそろ、お迎えの時間だけど一緒に来る?」

「行かねぇよ。 お前と廊下歩くとうっさくてしょうがねぇからな」

「はいはい。じゃ、ケガしないようにお家にたどり着いてね」

「ケンカはしてもケガはしねぇよ」

 ここの教室からちょうど見えるのは、2年生の校舎、そう、優衣ちゃんの教室。

 俺達の担任は、割りと話が短くさっぱりとした体育会系の先生。

 だから、毎日のように優衣ちゃんの担任の話が終わるのを見計らって、俺は優衣ちゃんの教室へ向かう。

< 83 / 275 >

この作品をシェア

pagetop