准教授 高野先生のこと

電話の向こうから聞こえる先生の声はやっぱりちょっとくぐもっていて……。

「休日の朝からすみません。今、話しても大丈夫ですか?」

ハキハキ系ではなくボソボソ系の先生の声は少しネムネム系に聞こえてしまう。



先生の用件は、ひとことで言うと――

“今日、お昼どう?”

という内容だった。


先生はこれから運転免許の更新手続きで試験場に行くそうな。

「“優良”なので、たぶんそんなに時間はかからないと思うんですが」

そういえば、ペーパードライバーのうちのお母さんがゴールドは楽だって。

「ただ休日は試験場とセンターのみの交付なので混み合っているかと……」

そして――

その試験場というのは、このうちからけっこう近いところなのである。




「じゃあ、あのコンビニで」

「はい」

あのコンビニというのは、車で送って貰うときに私がいつも降ろしてもらうお店。

試験場からだと少し遠くなる気がしたけど。

先生はそこで待ち合わせようと提案した。

「試験場を出るときに連絡しますね」

「はい」


先生がいる日曜日。

思いがけない素敵な休日の始まりである。


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