准教授 高野先生のこと

いつものコンビニの雑誌コーナーで私は高野先生が来るのを待った。


棚にある雑誌を手にとってみてはすぐ戻し、また取って……。

とにかくそわそわ落ち着かなくて、そんなことを繰り返す。


こうして外で待ち合わせて会うなんて、考えてみると本当に初めて。

それに正真正銘の休日の高野先生に会うことも。


ほぼ毎週土曜に会ってはいても、いつも完全なオフという感じではなかったから。

私は勉強が目的という建前上いつも文学関連の重いテキストを持参していたし。

先生もスーツではないにしろ、そのまま講義にでてもOKのような格好だったし。


だけど――

今日は私の知らない先生に初めて会える。

そんな期待で今からもうドキドキだった。


もちろん先生がこの間言いかけたことはずっと心にひっかかっていた。

それを解決、あるいは決着するために今日はわざわざこんな風に???なんて。

正直そう思わないでもない。

けれども――

しょせん私には先生の真意を巧みに聞き出す技量もないし。

ガツンと問いただすだけの勇気も無いのだから。

もしも、先生がスルーなら私もスルー。

私からはアクションを起こすまい。

っていうか、起こせないから起こさない……。


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