准教授 高野先生のこと

昼間だというのに、廊下はどんよりと暗くしめった空気が漂っていた。

自販機の明かりだけが煌々とうるさく営業中を主張している。


「これから秋ちゃんちに行くんだけど」

「あっ、そうなんだ。今日か」

「うん。なんか伝言とかあるかな?」


今日はもう授業がおしまいの私はこの足でそのまま秋ちゃんの実家へ向かう予定。


「んー。夏川サンによろしく、とか?」

「夏川さんは北海道じゃん」

“そうだった”と真中君が苦笑する。

「1人っていうか1.5人くらいで里帰りしてきてるんだもんな、ダンナ置いて」


真中君は学部から上がってきた人なので、当然よく知っている。

秋ちゃんのだんな様、ここの助教であった夏川さんのことを。



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