准教授 高野先生のこと

「僕、毎日誕生日でもいいなぁ」

「何言っちゃってんですか……1年で365歳ですよ?よく考えてみてください」

「まさに長寿だよね」

「だって誕生日じゃなくっても……」

「ん?」

「私はそばに居るわけですし」

「そうだよね。うん、それはそうだ」

「来年の誕生日も再来年の誕生日も、こんな風にお祝いさせてくださいね」

「ありがとう。君の誕生日もね」


今日も今日とて、私はやっぱり先生からたくさんの色々をもらってしまった。

いつもと変わらぬ優しさ。

心が満タンになるような安らぎ。

いつでも使えるおうちの鍵。

ひょっとしたら――

もれなく先生の人生がもらえる引換券も……。

今はまだ学生だし、すぐにってわけにはいかないけれど。

この引換券には有効期限はないのだから。

あせらずに、いつか使うその日まで、大事にだいじにとっておこう。

私は心にそう誓った。


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