准教授 高野先生のこと

照れたついでにどうしても聞いて欲しかった核心部分を伝えることにした。

「私、並木先生に誉められたとき――」

「ん?」

「なんかね、寛行さんのことを誉められたような気がした」

だって、今の私は寛行さんの指導のたまものなのだから。

「……」

「ん?どうしたの?寛行さん?」

目を伏せて黙ったままの彼の顔を覗き込む。


「可愛すぎる」

「へ?」

「可愛すぎるよ、僕の詩織ちゃんは……」

そう言って寛行さんはブクブクとお湯の中に沈んでいった。

私はこのとき初めて、自分の彼氏は照れるとお湯に沈むということを知った。

彼をお湯に沈めたいときには……ってどんな状況か意味不明だけど――

とにかく彼が照れるようなことを言いまくればよいのだと、私は一つ学んだのだった。


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