准教授 高野先生のこと

昨夜、寛行さんが帰ってくるまで私は起きて待っているつもりだった。

けれども――

疲れていた私はついつい知らぬ間に眠っていて……。


そして、時刻が午前3時をすぎたあたり。

急にぱちっと目が覚めた。

眠りが深く十分にやすめたせいか、タイミングがよかったのか。

とてもすっきりと覚醒した感じで。

起きたくて起きたわけじゃなかったけど、起きてしまったものはしかたなく。

目が冴えてしまった私は真っ暗な部屋でしばらく……ごろごろ、うだうだ。

だけど――

寛行さんがいないこのうちは、がらんとしていて殺風景で。

一人で眠るこのベッドは、無駄に広くて淋しくて。


そうこうしていると、玄関のほうからガチャガチャ、バタンと物音がして――

私はガバッと飛び起きて、現場急行よろしくパタパタと玄関にかけつけた。

まるで飼い主のご帰還で感激に打ち震える犬みたいに。

「おかえりなさい」

「ただいまなさい」

いつもの彼の奇妙な挨拶、高野先生じゃなくて私の寛行さんが帰ってきた。





< 366 / 462 >

この作品をシェア

pagetop