准教授 高野先生のこと
駐車場に戻ると、車は私たちの他には作業車と思しきそれが一台あるだけだった。
人気もなければ風もなく、とても静かな冬の夕暮れ。
「寛行さん、知ってた?」
「ん?」
車のドアを開ける手を止め、彼がきょとんと私を見る。
「今日は夕日がとってもきれいなんです」
ゆっくりと西の空を見上げると――
空には、とても立派なみかん色の夕日が映っていた。
「本当だ」
「美味しそうでしょ?」
「うん、とってもね。高級卵で作った半熟の目玉焼きの黄身みたいだ」
「わかるような、わからないような……」
そうしてしばらく私たちは、沈み行く美味しそうな?夕日を黙って眺めた。
初めて二人でまんまるの月を見たあの夜のことを想いながら。
“このまま……時間が止まってしまえばいいのに”
なんて、きゅんと切ない夜だったっけ……。
だけど――