准教授 高野先生のこと

私は達成感と充実感ですっかり気をよくしていた。

「私、こういう作業なら……」

「僕は」

先生が私の言葉を思いがけず遮った。


先生……?

「本当は学生に頼るのがとても苦手なんです」

そんなこと……。

なんと答えたら良いのかわからずに押し黙る。

「なのにどういう訳か……鈴木さんには頼ってばかりです」

先生はちょっと情けなさ気に恥ずかしそうに微笑んだ。

「私なんて……」

先生の言葉が嬉しくて、照れる自分が恥ずかしい。

「手紙、ありがとう」

「そんな、ぜんぜんです……」

私のほうこそ、返事がもらえてすごく嬉しかったのに。

それからは、メールのやりとりだってできるようになったし。


「僕は、けっこう疑り深い人間なんです」

「はい?」

急な展開に、思わずちょっと困惑する。

「神様の計略にひっかかったのはわざとです」

「えっ」

「“観念しろ”とあなたの手紙にあったから」

私はもういっぱいいっぱいで。

さらにさらに、すっかり言葉を失っていた。


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