Cold Phantom [前編]
「理由は3つ。一つは口封じかな。」
「それは暗黙の了解ッスね。」
「いいの?」
「いいも何も、秘密をばらしても特に得する事なんて何もないッスよ。それに俺は人が嫌がる事をしない主義ッス。」
「ありがとう。ヒロ君らしい答えだね。」
先輩はそう言うと小さく微笑んだ。
可愛いと言うより少し大人の余裕を感じさせるゆったりとした笑みだった。
「二つ目は場所かな。」
「場所?」
「うん、ヒロ君にはもうバレバレだから、話すなら外より部屋の中が良いと思って…結局は聞いてこなかったけどね。」
「何か、聞くのはまずいかなって思って…。」
「どうして?」
「槍倉記念病院は…確か最近になって介護や特別な症状を持った人以外の訪問医療は廃止になってた気がするし。ただの風邪だったら普通に通院するだろうし、風邪が酷くて行けなかったとしても、普通は救急車が来る物ッスよ。気にならない病気なら先輩はそう言う病気を持ってるって言ってくれるでしょうけど、誰にも知られないように訪問医療を受けていたら誰だって秘密にしているんだなって思うッスよ。」
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