Cold Phantom [前編]
「ヒロ君、あのね…聞いてほしい事があるんだ。」
「何ッスか?」
そう言ったヒロ君の表情に今度は私が驚く事になった。
ヒロ君は少し笑顔だった。
告白を断って、「やめて」なんて酷いこと言って、何も言わずにヒロ君から逃げて…
それなのにヒロ君は笑顔だった。
「何も言わないままじゃ、ヒロ君に失礼だから…」
「そんな事無いッスよ。」
「…」
私はヒロ君にそう言われて黙り込んでしまった。
「ここじゃなんなので、場所変えないッスか?ちょうど個室もすぐに用意できる場所にいる事だし。」
言ってヒロ君は観覧車に指を差した。
「また乗るの?」
「人に聞かれたく無い話じゃないッスか?」
「そうだけど…」
「俺も…」
「えっ?」
「俺も先輩に聞いてほしい事があるッス。」
そう言ってヒロ君は先程までの笑顔とは打って変わって神妙な表情に変わった。
「解った。それじゃもう一回乗ろっか。」
私はそう言って、先導するヒロ君の背中を見ながら観覧車に乗った。
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