Cold Phantom [前編]
「…」
「でも、先輩は戻って来てくれた。それが何だか凄く嬉しくて。」
ヒロ君は更に握る手を強くした。
痛くはないけど、離さないと言わんばかりだ。
「今でも先輩の事ばかり考えてる。病んでようが俺には関係無い。俺は今までの先輩しか知らないからそう言えるのかも知れないけど、俺はそれでも先輩じゃないと駄目な気がする。」
「それって!?」
「その話を聞いても、俺は変われなかったみたいッス。先輩の事やっぱり好きだ。」
「!?」
私はその時何を言われたのか判断するのに少し時間を要した。
同じ事を今日で二度も言われたのに不思議と今の私には信じられなかった。
同時に自分自身を怖がっていた私を呪いたかった。
「ヒロ君っ!」
私は涙を止められなかった。
ヒロ君に強く握られた手を今度は私が握り返した。
両手でしっかりとその右手を握った。
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