Cold Phantom [前編]

二章最終話 Take on me


「先輩、実は俺も先輩に言ってなかった事が一つあるッス。」
観覧車が降り既に半分を過ぎた頃、俺は言った。
「言ってなかった事?」
「はい、今更言うのもどうかとも思わなくも無いッスけど…。」
俺はゆっくりと口を開いた。
「俺も、記憶喪失だって言ったらびっくりするッスか?」
「え!?」
先輩は驚いた。
まぁ、無理もない反応だろうけど…
「俺は7年前に目覚めたッス。先輩と同じで名前も知らない状態で…。」
「そんな、ヒロ君も私と同じ記憶喪失なんて…。」
「でも、だからこそ先輩の気持ちは解る気がするッス。」
「あ…」
先輩は俺の言いたい事を察したようで目を軽く見開いた。
「俺も最初の頃先輩と同じように自分を怖がっていたんで…。先輩を見ていると、昔の自分を見ているみたいで放って置けなかった。」
「…。」
話を済ませた後、先輩はゆっくりと目を閉じてしばらくして何かを決心したかの様に開けた。
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