あなたしか見えなくして
1.運命の出会い
 放課後。誰もいない教室。
「花子……」
 自称彼氏・前田翔太はイスに座っている桜花子の横から抱きしめる。
「へ?」 
 変な声を発した。
「長い髪サラサラしてて、いいニオイ」 
 翔太の顔が近くなる。
「なあ、キスしていい?」 
 ヤバイ。キスされる。
 花子はイスから立ち上がる。そして、逃げようと走り出す。しかし、花子は腕を翔太に捕まれる。振り向くと怖い顔をした翔太がいた。
「なんで逃げようとするんだ」
「だって、翔太気持ち悪いんだもん! なんでそんなにベタベタするの!? 私、ベタベタするの嫌いだって言ったじゃん!!」
「別にいいじゃないか。俺はお前の彼氏だろ」
「離してよ! ちょっと!」
 左手で右手を一生懸命に引っ張るが左手にうまく力が入ってくらない。
「離したくても離せないだろ? お前、左利きだもんな」
 知ってたんだ。私が左利きって。私のこと好きなんだ。
「俺ら付き合ってるんだぜ? なんでそんなに嫌がるんだよ。意味わかねーし。キスしていいだろ?」
 翔太が言ってることは合っている。彼氏彼女がキスすることは普通。けして間違ってはいない。でも、私はあなたのことこれっぽちも好きじゃない。周りから、「花子なんで彼氏作らないの? ダサイ」と言われるから仕方なく付き合ってるだけ。あなたはただの飾りなの。あなたが一方的に私のことを好きななけなの。全校生徒一真面目でカッコイイあなたに「付き合おう」言われたとき。嬉しかった。でも、やっぱり私はあなたのこと好きじゃない。その証拠にキスなんて一回もしたことないじゃない。翔太ごめんね。
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