あなたしか見えなくして
「翔太。怖い」
「怖いってキスするだけだぜ?」
 甘い声で翔太は言う。
 怖い。なんで好きでもない相手とキスしないといけないの? ……私が悪いんだよね。好きでもないのにあなたに「付き合っていいよ」って言ったから。ごめんなさい。神様。私が悪いんんだよね。初めてのキスは本当に好きな人としたかった。本当に好きな人と……。やっぱり、だめ! 好きな人じゃなきゃやだ!
 翔太の唇が花子の唇を奪おうとする。
「いや!」
 左手に力を入れて翔太を拒否する。
「いや! いや!」
「花子……」
 唇と唇の間には、わずか二、三センチの距離しかない。
 キスされる。自業自得だね。私って本当に馬鹿。
 一粒の涙が花子の頬を流れた。その瞬間大きな音がした。
 ダン!
 唇と唇は触れずに離れる。翔太は教室の出口を見た。
「誰だ!」
「誰……?」
 と言って花子も続けて出口を見る。


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