【奏】春に降る雪
『茜らしくない。何かあったんだろ?

俺が話す前に何か言いかけてたもんな。

ちゃんと聞くから話せよ』




どうして




酷い事言ったのに




それなのにハルはこんな時ですら気遣ってくれる。




その優しさにハラハラと涙が頬を伝い始めた。





『…やっぱりな。泣くくらいの何かがあったんだろ?
俺ら友達なんだし遠慮なんてするなよ』




泣くだけの私にそう言ったハル。





ーートモダチーー…




ううん、きっとその資格も私にはない。




自分の事しか考えられなくなってる私には……




「友達…なんて…思ったことなんて一度もない」




ハルの顔が強張る。




『…じゃあどういうつもりで今まで俺と接してきてたんだよ。

話とか聞いてくれたのは友達だからじゃないのかよっ』




言っちゃダメ




「好きだからよっ!!」




そう思っていたのに思わず叫んでしまってた。





叫んだ瞬間、春一番の様な風が吹いて、私たちの周りに桜が舞う。





ハルが言う雪のような桜吹雪。





「ずっと…好きだった。ハルが瞳子先輩の話をする度に、苦しくなって…

いつも話を聞きながら、ハルが諦めてくれればいいのにって…」





堰をきったように止まらない私の言葉に顔を歪ませるハル。





私はハルにそんな顔しかさせられない。




優しくて愛しそうなハルの笑顔を私だけに見せて欲しいなんて、叶う事のない夢だったんだ。






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