朱鷺
鷺さんも思ってんじゃないの?」
「・・・そんなことは・・・」
「どーせ私は、悪人です、人でなしです、冷たい女です、でもね」
由美子はしたり顔でニッ、と首をかしげた。
「おんびんな別れ、きれいな別れ、おだやかな別れ、なんてないってことよ。」
「・・・・・・」
「相手の幸せを願いながら、もめずに握手して別れられるなんて、お互い相手のことたいして好きじゃなかったんじゃないのぉ。恋なんて、どーせわがままのぶつかりあいじゃないのかな?」
 朱鷺のウーロン割りを作ってやる、真顔になっている朱鷺の前にそっと置く。由美子はう~んと天井を仰いでから、朱鷺の目をしっかり見て言った。
「相手から、さりげなく離れて行ってくれないかなぁ~なんて思っている内は、絶対離れていかないわよ」
はっ、としたような顔になった朱鷺は、次ぎの瞬間由美子を睨んだ。すぐ目線ははずしたけれど。
「いつでも、おいでよね。愚痴なら聞くわ、いくらでも」
「・・・・・・」
「わたし・・・」
言いかけて、由美子がやめた。
「なに?」
「なんでもない」
気にしている朱鷺を、にっこりしてはぐらかして、由美子は口の中で言った。

・・・あたし・・・ 真理さんには恨まれるわね・・・


 「やあだぁ~何考えてるのぉ~」
裸の薫が、朱鷺の肩を揺さぶる。大げさに揺れて見せて、別にと、朱鷺が言う。
「一緒にいる時は、こっちだけ向いてくれてなきゃや
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