60代の少女
■青年
暗くて広い空間に、ゆっくりと光が差した。
半分くらい眠りかけた頭を叩き起こし、両腕を天へと伸ばす。
周りを見回せば、若いカップルたちが次々と席を立ち、大概の女の子達は男に縋って泣いている。

そこまで感動的な映画なのか、これ。

師事している絵画の先生に「色んな作品を見て、色んな影響を受けて来い。いい絵なんてのは、その先にあるものだ」なんて言われたものだから、とりあえず今話題の携帯小説が映画化されたものを見に来てみた。若い男女が恋に落ちるが、女の方が重い病気にかかって余命半年と宣告される。最後に彼女は亡くなってしまうが、男はそれでも変わらない愛を貫くという、定番の感動作だ。
確かに泣ける話ではあるが、絵のネタには正直足りない。
とにかく色々考えるより先に、カップルだらけのこの場所から早々に退散したくて、足早に映画館を後にした。男1人で、あの場所にはあまり長居したくない。
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