1ページの恋模様

爽やかくん

「しっかりつかまれよーっ!!」

幼なじみのわたしの彼氏が「よし行くぞっ」と、掛け声を上げた。


「おーうっ!」

そう返事をしたかしないかで、走り出した自転車。



次第に漕ぐスピードが上がり、春の風が体中に体当たりしてくる。

こうして、彼の背中にしがみついていると。


幼い頃を思い出す。



まだ小さいわたしを自転車の後ろに乗せて、公園まで走るお父さんの背中。

大きくて広い背中に落ちないように必死にしがみついて…。


道路の凹凸や縁石の低下の僅かな段差に、くっついていた体が一瞬離れる時がものすごく怖かった。


『こわいーっ!!』

どんなに大声で叫んでも。


『あっははっ』

低い声で豪快に笑い飛ばして、大丈夫だから。って、よくわたしを宥めていたっけ…。

大きくて広かったお父さんの背中。

小さい頃はわたしの倍はあったであろうその背中にしがみつくのがやっとだった。

お父さんのシャツは降りた時にはいつもしわくちゃによれていたな。


今じゃ、大きかった背中もなんだか小さく見えるから不思議。

それだけわたしが大きくなったのかな…。



「おーいっ。ちゃんとつかまらないとーっ、落ちるぞーっ。ボサッとすんなよーっ」

風と一緒に漂って背中の向こうから叫び声が聞こえた。


「ごめーんっ」

そう答えて、腰に回した腕に力を入れ、ぴとっと背中に顔をつけた。


暖かくて優しい温もりに包まれる。



たまーに、お巡りさんに注意される学校の帰り道。



―今はお父さんの背中じゃなく、小さい頃から大好きだった彼の大きくて広い背中にしがみつく。


小さい頃はお父さんの広い背中が。

今は彼の大きな背中が。


大好き―。



【END】


2009.4.15

< 5 / 5 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

優しい胸に抱かれて
羽叶/著

総文字数/362,659

恋愛(オフィスラブ)458ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
幾つかの色づく季節を通り過ぎ 作り笑いを貼り付けて がむしゃらに働いたのだって それはたった一つのことだけに 集中したかったからだ それは 何もかも忘れるために… 2015.10.7〜2016.5.25完結 章タイトルの□■の記号 □は現在 ■は過去 を、表してます。
作品紹介
羽叶/著

総文字数/10,326

その他34ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
更新履歴、あとがきも載せてます。 本当に長い間開いていなかったサイトを覗いたら仕様が変わっていて、またまた浦島太郎状態でいつ作品のスキンが使えなくなったのか、どう編集していいのかわかりません。 とりあえず使い方がわからないぞなんて 何の気なしに優しい胸に抱かれての完結ボタンを押しました。公開できるような完結済みの作品がないのに。 まあね、こんな長い話そんなに読まれないでしょ。自分のそんな軽薄な行動をのちに後悔します。 自分が思っていたより読まれてしまって、びっくりしております。 今まで通りファンメは出しませんが、全くおもしろくもないのですが別サイトにて小説の表紙にしていた画像を、こちらにファン限定として載せることにしました。 ファン登録して頂きありがとうございます。 まずは「この傷…」完結させるのにしばし時間をください。 ちょっとだけ別サイトで読めます。(変更あり)
切なさに似て…
羽叶/著

総文字数/180,490

恋愛(純愛)388ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
その口調に その仕草に その香りに 溺れそうになる… 第一部 2008.10.11〜2009.5.25 第二部 2009.7.1〜2010.1.5 [2016.6.9改稿] 『Berry's Cafe』でのみ公開

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop