パセリな彼女がついた嘘
自動ドアが開く音がして、
お釣りを受け取りながらそちらを見た。

すると淡いグリーンのマキシ丈のワンピースに、
グレーのパーカを羽織った沢木さんが、
見たことのない焦った表情で、レジに向かって歩いてきた。

僕と目が合った彼女はすぐにレジの店員に視線を向けて、
何やら彼に話しかけようとしていた。

僕がミネラルウォーターを袋から出しながら彼女とすれ違ったとき、
風呂上り独特の優しい香りがして、その後思わず深呼吸をした。

店の外に出て【燃えないゴミ】と書かれたゴミ箱に袋を捨て、
ペットボトルのフタをあけて水を飲んだ。

その行動は明かに口実で、店内の様子が気になった。

つまり、彼女のことが気になった。

男性店員がこちらを見た後、彼女は彼から何かを受け取り、
両手を胸の前で組んでお辞儀をすると、こちらに目を向けた。
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