パセリな彼女がついた嘘
彼女の普段まとめている髪は下ろされていて、
よく見ると、毛先は湿っていた。

リングに嬉しそうに口付けをするしぐさに
愛情が感じられ、恋人からの贈り物かと想像した。

それはむしろ被害妄想に近く、軽い嫉妬のようなものを感じた。

「あの、」

僕は自分の胸騒ぎを消すように思わず言った。
彼女が黙って僕を見上た時、風は彼女の香りを僕に運んだ。



「前にどこかで会ったことありませんか?」



初めて彼女をコンビニで見かけたときから思っていたことを、
僕はこのとき何のためらいもなく口にして尋ねた。

彼女は少しためらう様に「いいえ」と小さく言い笑った。

「名前聞いてもいいかな」

僕が期待せずに尋ねると、少しの沈黙の後、彼女は、

「瑠璃子です、沢木瑠璃子、ラピスラズリの和名なの」

と言った。

人の名前を美しいと思ったのは、これが初めてだった。
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