ギア・ドール
終章

 太陽の光は灰色の雲で遮られていて、昼間だというのに電気をつけないと、暗くて周りが良く見えない。


 それなのに、風は一向に吹くことはなく、夏特有の熱気と湿気はしっかりと、肌を通じて伝わってくる。


 そんな、ただ、そこにいるだけで気持ちの悪くなってきそうな天気を、扇風機で何とか打開しながら、二人の男が10畳ほどのリビングでラーメンを食べていた。


「まさか、本当に弁財天の人工知能の正体が『鈴蘭さん』だったとはな・・・。」


 一人は、黒髪の短髪。若干つりあがった目を持つ意外はこれといった特徴を持ち合わせいない、黒パンツに、黒ジャケットという、全身を黒の衣装で身にまとった海人という名前の青年。


「知っていて、やったんじゃなかったの?」


 もう一人は、長身で痩せ型、淡い金色をした髪の毛と細く垂れ下がった目つきは、一見すると他人に優しそうな印象を与えるが、それ以上に、ジーパンにTシャツという簡素な格好とボサボサにのびた髪がこの男のだらしなさを演出している。


 名前をアルクという。


「まさか?そこまでできるほど、俺も非道じゃないわ・・・。」


 相変わらずの具なしラーメン。


 今日で5日連続。


 もはや、『飽きた』という次元はとっくに通り越した。


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