ギア・ドール

 パイロットが必要ない兵器。


 これがロールアウトした瞬間、機械が人間を殺す地獄のような時代が訪れる。


 2年前、彼の部屋で話し合った恐怖。


 私たちは、これを作らせないために必死だった。


 命を賭けて、実際に大切な人たちを大勢失った。


 それなのに・・・今、あの機体の中には鈴蘭の脳みそが入っている・・・。


 そんな現実、許すわけには行かない・・・。


 行くぞ。


 私は、意思を固めると前に歩を進める。


 異変が起きたのはその瞬間だった。


「ん?」


 最初、その異常に気がついたのは、人工知能のプログラミングのエラーをチェックしていた、整備士の一人。


「メインシステムに、異常発生!」


 整備士の叫び声が響く。


「!」


 誰もが、目を疑う光景だった。


 突然・・・白い機体の右腕が動き出したのだ・・・・・・・。


「何事だ!」


 上級階級の服を着ている軍人の一人が叫ぶ。


 しかし、答えるものは誰もいない。


 弁財天の両目が、緑色の蛍光色を放ちながら不気味に光る。


 右腕の周りに組まれていた整備用の足場が破壊され、何名かの整備士が、そこから振り落とされた。


 どう考えても、起動テストではない。


 人工知能搭載の、完全自立型ギア・ドール。


 元来、自らの意思を持ち、自らの考えの下で動き出すギア・ドール。

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