ギア・ドール
その文字は、唐突にモニターに現れた。
まったく理解できない言葉だったが、弁財天のモニターは、そんな私の思想を無視するように、新しい文字を、次々とモニターに浮かび上がらせる。
『自動整備システムチェック完了、オールグリーン。残弾確認21759.予想稼働時間230時間。任務復唱「戦争なんて・・・この世界からなくなればいいのに・・・」了解!』
専門的な文字が並ぶ中で、唯一、理解できる言葉は、これぐらいだった。
戦争をなくす?ギア・ドール一機で?
「な・・・何をするつもり?鈴蘭?」
しかし、鈴蘭は質問に答えず、バーニアをふかすと、戦場に一直線に向かう。
『速度200、敵接触まで残り、3、2、1・・・』
カウントが、『0』になった瞬間、弁財天のマシンガンが火を噴いた。
残弾カウントが、めまぐるしい速度で減っていく中で、私のモニターの前で、5機のギア・ドールが、一気に破壊される。
・・・・・・虎神の機体だった・・・。
なんだ・・・何が起こったというのだ?
「鈴蘭、アレはアナタにとっては味方の機体だよ!!」
思わず大声で叫ぶ。
状況がまったく理解できない。
『こちら、虎神軍所属の第8ゴルタ小隊!諸君が今撃墜した機体は、味方機である。誤射であるコトを祈るが、これが諸君の意思である場合・・・』
私がコックピットで困惑していると、突然、弁財天の通信機から声が聞こえる。
おそらく、目の前にいる虎神のギアから聞こえてきたのだろう。
確かに、弁財天は虎神所属の信号を出している。
不意打ちもいいところだ。
「鈴蘭!」
しかし私の声もむなしく、弁財天は、先ほどの通信の送り主であろうギアを、背中の剣で、一刀両断にする。