西の狼
旅路
「………もう行くのかね?」
ヴォルカスは、大勢の部下達と共に、町外れでレオンを見送りに来ていた。
レオンが回復してから、特訓に数日を要し、あの戦いから一週間が経っていた。
「あぁ…世話になったな、ヴォルカス。」
「いや…我輩も、有意義な時間を過ごせた。こちらこそ礼を言おう。ありがとう。」
「……寂しくなるッスねえ……」
ロジャーは、小さく溜め息を吐いた。
だが、回りの兵士達やヴォルカスの視線に気付いて振り返った。
「……えと………何スか?」
「………お前も行くんだぞ?」
「はい!?」
あまりの予想外の言葉に殆ど言葉を続けられなかった。
しかし兵士達があれよこれよという間に荷物を揃えてしまった。
これでは、後に退くことは出来ない。
「…………あぅ………」
「そんな顔をするな……これをやろう。」
ヴォルカスはそう言って長い布に包まれた物を渡した。
ロジャーが布を取ると、中から杖が姿を現した。
「これは………『マーリンの杖』ッスか!?」
「あぁ、そうだ。かつて、最強の魔術師マーリンが愛用した杖だ。この杖は、それ自身が膨大な量の魔力を内包しており、それだけでも上級魔法を扱えるものだ。お前の旅に役立つことだろう。」
「………ッ!?」
ロジャーは、ここで溢れる涙を抑えることが出来なくなった。
「…ッ……お世話に…なったッス……!!」
ロジャーは、ヴォルカスとその後ろの兵士達に深々と頭を下げた。
「頑張ってこいよ!」
「泣いて戻ってくんじゃねぇぞ!」
兵士達が、様々な言葉で二人を送り出した。