西の狼
「!?」

その男はアレンとすれ違う瞬間に声を発した。その声はさっき聞こえた声だった。

「この先に野営がある。そこに部下達がいるから、お前達はそこにいろ。」

「…すまない…」

その一瞬の邂逅も無かったかの様に男は追っ手目掛けて馬を走らせた。

「…行くぞ!」

アレンは部下達と馬に喝を入れて更に速度を上げた。あの男の誠意を無駄にしないためにも。






「…あれが、共和国の大使か…なるほど。いい目をしてやがったな。」

ガラルドは馬を走らせながら素直な感想を漏らしていた。しかしそれも早々と切り捨てて、背中に背負った剣を抜いた。

「はあぁっ!」

ガラルドは剣に魔法を纏わせてそれを相手に飛ばした。馬に乗っていた追っ手達はかわせる訳も無く、揃って吹き飛ばされていた。ある程度近付いたガラルドは馬を降りた。流石に馬に乗ったままでは戦いづらい。

「さあて…始めようぜ、帝国兵共…」

ガラルドが剣を構えた先では、吹き飛ばされた男達が怒気の籠った瞳でガラルドに剣を向けていた。

「…行くぞ!」

ガラルドと帝国兵達は同時に駆け出した。






「…おい、あいつは大丈夫なのか?」

グランは率直な意見を述べた。

「あぁ。さっきの魔法はあいつが放ったものだ。それもかなり高威力の…恐らく高位の騎士なんだろう。任せても大丈夫だろう。」

そう言いながらアレンは馬を止めた。それに並ぶ様に部下達も馬を止めた。

「あれが、野営の様だな…」

アレンが見つめる先には、確かに野営が築かれていた。

「…しかし、いきなり入っていいものでしょうか…」

老いた声の部下が言ったことはアレンも考えていた。そこに何かがアレンの前に降りた。
「!?」

それは、少し大柄な狼だった。
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