怪盗ブログ

振り返ると、そこにいたのは意地悪色男の高瀬君だった。


「よかったでしょ?」


「え?」

あたしはわけが分からず聞き返す。


高瀬君はにこにこしながら近付いてきた。

「な、なに?」

数歩後ずさると背中が壁に触れた。


(なんなの!?)


逃げ場を失くしたあたしに高瀬君は顔を近付けてくる。



「ちょ……っと!冗談でしょ!?」


左手で高瀬君の体を離そうとする。

けれど高瀬君はビクともしない。



そのままあたしの耳元に口を近付けて

「あの監督、もと警視庁のお偉いさん」

そう囁いた。


耳にかかる熱い息でそれどころではなかったあたしは、その言葉を理解するまでに数秒間必要だった。
< 73 / 263 >

この作品をシェア

pagetop