不良×依存症
* *
「お前、相変わらず冷めた男だなぁ」
捺来は肩の自由を失い、何かが肩に乗っかっていた。
捺来は深いため息をつく。
「健(たける)」
「キミの兄ちゃんは、あの熱湯に浸かっても火傷1つしないのかい?」
無理矢理、肩を組まれ、捺来は再び顔を歪めた。
「お前…ッ!」
「大丈夫、分かってるって。兄貴の事は誰にも言うな!だろ?」
「違う!話題にのせるな」
ポケットに手を入れ、携帯を強く握り締めた。
…怒りの現れ。
「…お前には【冷】の言葉が、誰よりも似合ってる」
特徴ある八重歯を輝かせながら、健は笑った。
「お前は【馬】と【鹿】しか似合わないよ」
捺来はフッと笑うと、静かに肩を掴む健の腕を振り払った。
「何それ!動物だけじゃねえか!」
「突っ込みはそこかよ」
捺来は呆れるように笑うと、後ろを振り返らずに健に右手を上げた。
そして捺来は、表情を強張らせる。
ただ果てしなくどうしようもなく続く空を睨んで。