レンタるな恋人
『あ、もしかしてこの前のこと気にしてる?
大丈夫だって
今度こそ、うまくいくからさ』

いかねーよ
あんたは知らないだろ、琉菜の抱えてる心の痛みを

……って俺も格好わるっ

こんなところで立ち聞きするなんて
しかも飯田に苛ついてる

俺は手に持っていた本をわざと下に落とした

(人がいますよー)アピールをしてみた

床に落ちた本を拾うと、顔をあげて飯田を見つめた

「ちっ、岩永先生、また今度」

飯田はよそよそしい口調で、書庫を出て行った

俺と岩永先生だけの二人きりになる

岩永先生は頬を赤くして、気まずそうに立っていた

「髪、似合いますね
そっちのほうがいいと思います」

俺は眼鏡を押し上げて呟いた

「でも学校で教師がああいったことをするのはどうかと思いますよ」

俺は本を手に持ったまま、書庫の階段を下りていく


まいったな

あんなに苛つくなんて思わなかった
同じ学校っていうのもあまり心臓によくねーかも

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