契約の恋愛
8年前

黒澤紀琉 中学二年生

「…ちゃん。お兄ちゃん。」
聞き覚えのある声に、目を覚ます。

体を激しく揺らされ、危うくベッドから落ちそうになった。

俺は何かの機会音のような、キーキーとした声に負け体をしぶしぶベッドから起こした。

「…ホントうるさい、琉衣。もうちょい静かにして。」
ベッドに身を乗り出し、俺を見つめる琉衣はいつものように屈託のない笑顔を浮かべていた。

「だってお兄ちゃんなかなか起きないんだもん。キーキー言わなきゃね。」

琉衣は大きい瞳を瞬かせ、いたずら気に微笑んだ。

俺はしぶしぶベッドから降りて、一階に向かった。

その後ろを琉衣がちょこちょことついてくる。

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