契約の恋愛
俺でも恵流でも防ぎきれない嫌がらせなんて、数えきれない位あるから。

俺も恵流も、心の中では歯がゆく思っていた。

「…あいつは、人が良すぎるから。」

そう言い訳のようにつぶやき、俺は琉衣から視線をそらした。

すると、テーブルの向かい側にいたなずさと目が合う。

なずさは俺と目が合ってしまった事自体に嫌悪感を抱くように、目をそらした。
もう慣れたが、何回やられても何故か腹が立つ。

なずさは俺と同じ学校に通う同級生だ。

女っぽい名前だが、実は男で名前の通り可愛らしい外見をしている。

バスケ部に入っていたらしいが、最近辞めたと聞いた。

理由は知らない。

そのなずさは、俺が施設に入ってきた時から俺を嫌うそぶりをする。

俺達兄妹の抱えているものを避けようとしているのならまだ分かるが、こいつは何故か琉衣には普通に接する。

俺だけには、どうしてもなつかない。

まるで、俺をかたくなに拒んでいるようだった。

もうそれが日常で、俺は大して気にもしなくなったが、近い将来その理由を知る事になる。

俺はその場にあった箸をいじる。

人が良すぎると言った俺の言葉を否定するように、恵流は口を開いた。

「お前もな。」

「は?」

「お前も、人が良すぎる。」
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