契約の恋愛
「…自分の為?」

俺は怪訝に眉をひそめた。
周りは食器の並べる音や、人の話声であふれているというのに、その時だけは恵流の声だけが唯一の音のように…俺の耳に響いた。

自嘲気味に笑う恵流の笑顔は、何か責任を背負っているようで、はっきりいって痛々しかった。

「そう。自分の為に、お前生きてるのかよ。」

……。

意味が分からない。

そのときの俺は、そんな事も見失っていたんだ。

自分の意味…生きる理由…人を愛する意味。

そのどれもを、どこかに置いてきてしまって…。

押し黙る俺は、どんな表情をしていたんだろうな…。
恵流。

お前は、そんな俺をどういう想いで見ていた?


「…紀琉はー、琉衣ちゃんの為に生きてんだろ?」

……。

俺は、睨むような目付きで恵流を見た。

今ここで言うような事じゃないだろ。

そんな視線を送りながら。
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