スカイ・フラワー

ツマンナイ……






「つまらない……」

「へ?その本つまんないの?」

ハッとした香は本をパタンッと閉じると、席を立った。

教室は昼休みに入り賑わっている。楽しそうな話し声や笑い声は香にとっては苦手なものだった。

「どこ行くんだよっ」

「……」

香の向かった先は購買だった。まだ、何人かパンを選んでいる。香はそこからパンを二つとパックジュースを手際良く取ると会計を済ませた。

「昼飯食べんのか?」

香は黙ったまま芝生のある手入れされた中庭のベンチに座った。

「そこで食うのかよー」

そう言うと幹也は走って校舎へと戻って行った。

香は暫く幹也の背中を見ていた。






パックジュースには、暑さに汗をかいているように水滴がついている。

パンを食べようとした時だった。幹也の声が、香の動きを止めた。






「三枝ぁーーーっ!」

幹也はドカッとベンチに腰掛けると、目を丸くする香に二カッと笑った。

手にはコンビニの袋があった。

「へへ。一緒に食おうよ!」

「……」

幹也は香を気にする事なく、焼きそばパンを頬張った。








「つまんなくないのか……」

「なにが?」



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