ずっと抱いてて
第1章
     1
 朝方、ボクは自室の自分の眠っていたベッド上で、昨夜からずっと横にいた愛海(あみ)がいないのに気付く。


「愛海」


 ボクは眠たい目を頻(しき)りに擦りながら、彼女の名を呼ぶ。


 だが、返事がない。


「愛海。……いるんだろ?」


 するとスッピンだった肌に少し時季が早い夏物のファンデを散らして、グロスまで塗った愛海が、


「ああ、ごめんごめん。メイクに夢中になってた」


 と言い、ベッドサイドに来て、笑顔を見せる。


 彼女は元々肌が綺麗なので、化粧も薄くしているようだ。


 ボクも濃い目のメイクをする女性を極端に嫌っていた。


 愛海はボクのそんな性癖を知っているからか、乗せるような感じで、極力薄めにメイクしている。
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