ずっと抱いてて
 確かに外国の空港やホテルなどで、外国人の強い体臭がフロアなどに広がっていて、ボクも思わず閉口した経験がある。
 

 外国人――とりわけ欧米人――はそういった腋臭などを半ばセックスアピールのようにしているし、ボクもあまりに体臭が強い人たちを敬遠した過去があった。


 ただ、院内に佇むうち、自然とボクは笑顔になれる。


 それはかけがえのない恋人――ひいてはパートナーにだからこそ見せられる笑顔なのだった。


 そしてボクは愛海の手を握り締め、彼女の掌の上に自分のそれをそっと重ね合わせる。


 ボクたちは信頼できる関係に戻ったのだった。


 羽尾のようにボクに対し、半ば貶(おとし)めるかのような発言をしてきた奴らとは違って……。


 ボク自身、最愛の愛海に自分の心のうちを告げた。


「ずっと悩んでたんだ。ホントは忘れてもよかったのにね」


「そんなに抱え込んでたの?」


「ああ。半分は隠してた」

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