ずっと抱いてて
第14章
     14
 六月の初旬にボクたちは二人揃って、街中にある精神科に通院した。


 愛海が車を運転してくれ、ボクも同乗し、病院に辿り着く。


 やや広めの駐車場に車を停めた。


 そして二人で並んで歩き出す。


“誰も信用しないし、顔も見たくない”


 そう思っていたボクは、ゆっくりと病院内へ入っていった。


 院内は心の病気を持つ人たちが集まる場所だからか、静かなBGMが掛かっていて、ゆっくりとした時間が流れている。


 都市部にある病院にしては珍しいぐらい内外は静かで、ボクも待合室で横に座っている愛海に心を開いた。


「……辛かったんだ」


 一人で抱え込むにしてはとてもきついぐらい、ボクの病は大きい。


 それだけ普通の人からは理解しがたい悩みなのだ。
 
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