Secret Prince
「……分かりました。
 僕は、目立つのが大の苦手なので、この勝負、必ず、勝たせていただきます。
 (雨宮が動かない、以外には、何も言ってねえ。
  つまり、それ以外は、何でもアリって事だ。
  上等じゃねえか、……俺に勝負を挑むのなら、受けて立つぜ。)」



俺は、心の奥底に、絶対的な自信を秘めて、
雨宮先輩の瞳を真っ直ぐに捉えて、はっきりと、そう言い放った。















俺は、月であり、黒猫でもある。
それから、ピエロ、道化師でもある。
狂った宴には、それだけ狂った者がお似合いだ。
蝶のように舞い、蜂のように刺す。
それだけじゃない、いつまでも、踊り続けてやるよ。


















「ふふ、それじゃあ、話は終わった事だし、戻ろうか。
 これ以上長引いたら、誰かに勘付かれかねないし。」



ね? と、小首を傾げる雨宮先輩を、俺は、改めて、芸達者な人だと思った。
一瞬にして場の雰囲気を変えてしまう、声色と、表情と、仕草。
その奥に秘められたものが何か、探ろうと、雨宮先輩の表情を窺ってみたが、
何も感じられなかった。
例えるならば、レーダーに何の反応もない、そんな感じ。
邪気も狂気も感じられない、純粋無垢な微笑み。
歪んだ感情だけが、全てなのかもしれない。
それ以外は、何処までも、整然と佇む、綺麗な人形のようだから。
だが、俺は負けない、絶対に、だ。




















はぁ、…………それにしても、憶測とはいえ、
やっぱり、この人、俺の獲物を持っているんだろうな。
なかなか手強い相手だな、……作戦は、念入りに練るとするか……。

























「そうですね。
 それじゃあ、行きましょうか。」



俺は、口元に作り物の笑みを湛え、雨宮先輩に手を差し出す。
一瞬、キョトンとした表情を見せたが、意味が分かったようで、
俺の手を握り返してきた。
その手を引いて、俺は、歩き出す。
終わりなき、宴への扉が、今、静かに開いたのかもしれない。
< 189 / 644 >

この作品をシェア

pagetop