恋の花びら
俺は聞いてしまったのだ。
それは昨日の放課後、
紫織を迎えに行こうと彼女のクラスを訪れたときのことだった。
“うん大丈夫。
彼氏にはバレないから。じゃっ、
明日ね。真人”
教室のドアにかけた手が止まった。
携帯を耳から離す彼女。
確かに聞こえた。
真人……と。
男と会う約束をしていたのだ。
しかし、
まだそうと決まった訳ではない。
従兄弟とかかもしれないし。
小さな希望を捨てたくない。
そう思って聞いた。
“誰から電話?”
彼女は俺から目をそらし、答えた。
“みっちゃん”
みっちゃんとは紫織の友達だ。
何故か紫織は隠したのだ。
真人という奴と合うことを。