盲目の天使
「あの・・・。
あなたは、一緒では、ないのですか?」
リリティスは、すぐそばにいるカルレインにも、
聞き取れるかどうかの、小さな声でつぶやいた。
「ん?俺は、お前が嫌だと言うまでは、ずっとそばにいてやる」
カルレインは、リリティスが、たんに見知らぬ国にいることで、不安に思っているのだろうと解釈した。
目覚めたら、いきなり“知らない人間”に囲まれていれば、
それは、何より不安が勝るだろう。
リリティスは、その言葉に安心して、柔らかく微笑んでみせる。
それは、今までカルレインが見た中でも、最高にやさしい、とびきりのものだった。
「お前が寝るまで、ここにいてやるから、目を閉じていろ」
「はい・・・」
・・私、やはり変だわ。
男の人が、自分の寝室にいて。
こんな風に、頭を撫でられているのに、
ちっとも嫌じゃないなんて・・・。
『ずっとそばにいてやる』
自分が何に安堵したのか。
リリティスは、はっきりとわからないまま、夢の中に入った。
カルレインの大きな掌に、頭を撫でられながら。