盲目の天使
しとしとと降る雨が、大地を潤し、久々の天からの恵みのおかげで、森の木々は緑を濃くした。
その森に入ってきた一行を歓迎するように、木々が、ざわざわと音楽を奏でる。
「よし、今日はここで野営にしよう」
ケータの森の中ほどで、前回休憩したのと同じ場所を、カルレインは野営地に選んだ。
カルレインの言葉に、兵士たちは今夜の寝床を確保するべく、てきぱきと動く。
「私、水を汲んできますね」
兵士たちの間をすり抜けて、リリティスが雨の雫などものともせず、瓶を片手に走り去る。
「待て、リリティス!
お前は、馬車の中で大人しくしていろ」
ストレア山脈を越えてすぐ、カルレインは、リリティスのために馬車を手に入れた。
リリティスは、馬でいいと言い張ったが、
リリティスの体を、心配したカルレインによって、強引に馬車の中に詰め込まれた。